見せ玉って何?板に突然出てくる謎の大量注文の正体
取引アプリの板(注文状況の一覧)を眺めていたら、あるとき急にすごい量の買い注文が現れた。
「おっ、これは上がりそうだな」と思って見ていたら、数秒後にその注文、跡形もなく消えていた。
え、何だったんだ今の。気になって調べたら、「見せ玉(みせぎょく)」という、ちゃんと名前のついた行為だった。しかも普通に犯罪だった。
板ってそもそも何
見せ玉の話をする前に、まず板について。
板とは、ある銘柄に対して「いくらで何株買いたい/売りたい」という注文が、価格ごとに一覧で表示される画面のこと。
「1,000円で500株買いたい人がいる」「1,010円で300株売りたい人がいる」……という感じで、売買の需給がリアルタイムで見える。株を始めて最初に「うわ、情報量多い」となる画面のひとつだと思う。
見せ玉は「約定させる気のない注文」
見せ玉とは、実際に約定させる意思がないのに、大量の注文を出して板に表示させる行為のこと。
たとえばこんな流れ。
- ある人が「1,000円で10万株買います」という巨大な注文を出す
- 板を見ている他の投資家が「こんなに買いたい人がいるなら上がりそうだ」と判断して、実際に買い注文を出す
- 株価が上がり始めたところで、最初の10万株の注文をサッと取り消す
- 最初から買う気なんてなかった。板を見た他人を動かすためだけの「見せかけ」の注文だった
つまり、自分は売買せずに、他人の判断を歪めるためだけに使う偽の注文ということ。
なんで違法なのか
見せ玉は相場操縦の一種として、金融商品取引法で明確に禁止されている。
相場操縦というのは、「本来は自然な需要と供給で決まるはずの株価を、人為的に操作して、その動きを利用して自分だけ得をしようとする行為」のこと。見せ玉はまさにこれで、実際の需給とは無関係な「見せかけの人気」を作り出して、他人を動かして利益を得ようとする。
罰則もかなり重い。個人の場合は10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、法人の場合は7億円以下の罰金が規定されている。加えて課徴金の対象にもなる。
実際、証券取引等監視委員会が大手証券会社の取引を相場操縦の疑いで調査した事例も報じられている。個人のデイトレーダーが見せ玉的な手法を使って摘発されたケースもあるらしい。「バレなさそう」と思われがちだけど、ちゃんと監視されている世界のようだ。
初心者が知っておく意味
自分は当然、見せ玉なんてやる気もやり方も知らないので、「へー、そんな行為があるのか」で終わる話ではあるんだけど、知っておく意味はあると思った。
板に突然巨大な注文が出て、すぐ消える。これを見たときに「何かがおかしい」と気づけるかどうかは、初心者にとって地味に大事な気がする。見せかけの注文に釣られて「みんな買ってるから自分も」と飛びつくのは、思わぬ高値づかみにつながりかねない。
板の情報を鵜呑みにしすぎない、というのもひとつの防御策なんだろうな、と思った。
まとめ
- 見せ玉=約定させる気のない注文を出して、他人の判断を誤らせる行為
- 相場操縦の一種として金融商品取引法で禁止。個人でも懲役刑の対象になりうる重い犯罪
- 板に突然出て消える不自然な大量注文は、見せ玉の可能性がある
- 板の情報は「絶対に正しい需給」ではなく、鵜呑みにしすぎないほうがよさそう
板を見て「え、今の注文何?」と思ったとき、この言葉を知っているかどうかで見え方が変わる気がする。世界は思ったより監視されているし、思ったより騙し合いも起きている、ということを知れた回だった。